DIYの普及に必要なのは「商品の上にノウハウをのせて提供する」こと

DIYを周知させるために和気産業が重視したこと

DIYを普及させるにあたっての課題は、「DIYがまったく新しい業種であり、消費者に理解されにくいこと」でした。そのため、当時の和気産業はPOP(Point of purchase advertising)を重要視しており、その精神は現在にも引き継がれています。

1970年代の売場の様子。POPはDIYの普及に欠かせないツールのひとつだった。
1970年代の売場の様子。POPはDIYの普及に欠かせないツールのひとつだった。

POPとは店頭に並ぶ商品の横に置かれているボードなどを指します。商品の情報を伝えるだけでなく、使い方や商品の魅力を伝える大切な役割があり、「購買意欲促進広告」ともいわれています。

現在も商品の魅力を適切に伝えるために活用しているPOPですが、当時は「使い方を周知させるため」に積極的に使用していたのです。

商品を種類ではなく用途で分けるという発想

消費者にDIYを理解してもらうためには「商品のうえにノウハウをのせて提供する」ことが必要だと考えた弊社。POP以外に、商品を種類ではなく用途で分けた店頭販売にも取り組みました。

その3つの用途が「すき間型」「ずぼら型」「省エネ型」です。

すき間型商品とは、「生活空間をより効果的に使おう」を合言葉にした商品群を指します。たとえば洗面所の狭いすき間を利用し、下着などを入れる棚を作るための板や金具、天井や床を倉庫代わりに使えるようにする材料や道具などです。

ずぼら型商品とは、組み立てさえすれば簡単に作ることのできる棚や物置、弊社が開発した継ぐことでいろいろな幅にできる板『ストライプウッド』などです。

省エネ型商品とは、弊社が開発した断熱材『ダントール』など。

断熱・吸音材『ダントール』

他にも、光を反射する白やクリーム色の塗料を壁や天井、床に塗ることで部屋全体が明るくなり、照明のルクスを下げることができることから、これらの塗料も省エネ型商品に分類しました。

まとめ

POPも用途型の分類も、今ではごく当たり前のことかもしれません。しかし、DIYが周知されていなかった当時としては、画期的な方法だったと想像します。

用途別商品群による店頭販売に踏み切ったのが、1979年(昭和54年)9月のこと。翌年以降、当時の社長であった和気博史は、メディアに呼ばれることが増えていきます。大阪新聞の記者の方に「アイデアと決断力で業界に聞こえた人物」として紹介されたこともありました。

「商品の上にノウハウをのせて提供する」という考えが、DIY普及の一因となったのではと自負しています。

※弊社社史「和気産業65年の歩み」P159~160・166より抜粋