「日曜大工」という言葉が生む誤解

素人が家や家具の修繕をしたり、家具を作ったり、塗装したり、ガーデニングしたりすることを指す「日曜大工」という言葉。しかし大工とは、主に木造建造物の建築・修理を行う職人のこと。壁を塗るプロは左官や塗装職人であり、ガーデニングのプロとしては、園芸家やガーデナーがいます。

そのため「日曜大工」という言葉だけでは表現しきれず、当時は、不自由を招くこともあったようです

実は欧米ではすでにDIY(Do it yourself)という言葉があり、広い意味での日曜大工として立派に通用していました。弊社でも、もちろん同様の認識があったものの、当時の日本では理解されにくいと考え「日曜大工」という言葉を使っていました。

アメリカでは通じない!?「Sunday Carpenter(日曜大工)」

実はアメリカには、Sunday Carpenterという言葉もありました。Sunday(日曜)+Carpenter(大工)なので、まさに直訳した言葉といえますね。

しかしこれは、「Saturday Shopping Sunday Carpenter」というジョークとして使われる言葉なのだそう。週休2日制の会社にあって、土曜日は家族の自家用運転手としてショッピングセンターへ行き、日曜日は日曜大工に追い回される残念な夫という意味だそうです。

日本でいう「日曜大工」とは、かなり意味合いの違う使われ方だったのですね。

世界共通語である「DIY」へ

1960年代後半に生まれた「日曜大工」は、日本で次第に広がっていきます。特にハード面である日曜大工用品の取り扱いは数量、金額とも、大幅に伸びていきました。一方で、弊社はハード面だけでなく、ノウハウの提供というソフト面にも力を入れるため、1971年から1978年頃まで「日曜大工センター」というフランチャイズ展開にも力を入れていました。

そんな中、日本では「日曜大工」「Do it yourself」「DIY」「HI」といった言葉が入り乱れるようになります。業界では、これを一時的なブームとして終わらせず確立させたいとの考えから、1970年代中頃よりDIY関連の書籍がさかんに発行されました。

・DIY店経営入門(新建材新聞社)会田玲二氏・斉藤幸吉氏による共著
・DIY店マニュアル(流通システム開発センター)中小企業庁監修
・DIY店経営百科’75(ダイヤモンド・フリードマン社編)中小企業庁監修

これらの書籍の中で、DIYとは材料・道具・ノウハウの3つを兼ね備えた、いわばハードウエアとソフトウエアの両面をもつことが示されています。

こうして1970年中頃以降、現在ではすっかり定着した「DIY」という世界共通語が、日本にも浸透していったのです。

まとめ

若い世代の方は「日曜大工」という言葉には、なじみがないかもしれません。しかしDIYが普及する以前の言葉として、1960年~1970年代にかけて広く使われていた言葉です。

現在でも「日曜大工センター」という言葉を残し、営業するホームセンターもあります。それらのお店の多くは弊社とともに「DIY普及」のために尽力してくださった仲間ともいえる存在です。

※弊社社史「和気産業65年の歩み」P120~122・143~145より抜粋