家族で楽しむDIYのカタチ。イギリス館のマネキン人形が映し出した「日常の幸せ」

DIYの未来を確信した当時の専務・和気博史の目は、1967年のモントリオール万博へ向いていました。
周囲の猛反対や巨額の渡航費という壁が立ちはだかるも、彼の情熱が消えることはなく、彼は妻の家族から家1軒分の資金を借り、会社には「病気休暇」と届け出て私費での渡航を決行しました。
すべては未来への投資。そんな博史の人生を賭けた1ヵ月の大勝負が始まります。

今回は、退路を断ちカナダへ旅立った彼が見た光景に迫ります。

前回の内容はこちら!

モントリオール万国博覧会について

モントリオール万国博覧会は、カナダ建国 100 周年を記念して開催された国際博覧会でした。
1967年4月28日から10月27日までの183日間の会期で、モントリオール市の人口である260万人の20倍以上にものぼる、約5,500万人が来場しました。
会場となったセント・ローレンス川に造成された人工島のサンテレーヌ島とノートル・ダム島を中心にした365ヘクタールの広大な敷地に、カナダ、イギリス、日本など全62ヵ国が参加しました。また、団体・民間・州政府・企業展示を含めると、展示参加総数は90か国にもおよび、世界中から大きな注目を集めた一大イベントでした。

モントリオール万博のテーマは「Man and his World(人間と環境)」で、数題のサブテーマをそれぞれのパビリオンに展開していました。
中でも注目を集めたのは、セント・ローレンス川を挟んで向かい合っていたアメリカ館とソ連館です。アメリカ館のパビリオンは「フラ・ドーム」と呼ばれた直径70メートルのアクリル張りの球体で、アメリカ館もソ連館も宇宙関係の最新の展示を行い、多くの来場者を魅了していました。

イギリス館について

しかしながら、博史が特に注目したのはイギリス館の展示でした。
ノートルダム島のフランス館と西ドイツ館の間にあったイギリス館は、「Challenge of Change(変化への挑戦)」のテーマを5つのセクションに分けて展示を行いました。 

モントリオール万博イギリス館の外観
イギリス館外観 (株式会社乃村工藝社 所蔵)

イギリス館は、「A journey through Time(国家の成立)」、「A Roll-Call(英国の特長)」、「Britain Today(今日の英国)」、「Geared to Advance(英国工業)」、「Britain in the World(世界の中の英国)」の5つのセクションで、イギリスの過去・現在・未来を展示していました。
その中でも博史が注目した展示は、「Britain Today」エリアにあった、DIYをする人たちのマネキン人形でした。

1枚目の写真の左端では子どもがイスにペンキを塗る様子、2枚目では壁紙を貼る様子が再現されているのが確認できます。また、別の写真では、電動工具を使う様子が写されています。 

イギリス館内部のマネキン展示
出典:『expo67 montreal canada』THOMAS NELSON & SONS、1968年(株式会社乃村工藝社所蔵)

「Britain Today」の展示エリアについて、当時発刊された雑誌では「日常の生活の種々の場面を特別に作られた原寸大のマネキン人形で構成し、インテリア、エクステリアの生活を象徴的に表現している。これらの人形がより具体的に、楽しい雰囲気を出している事は興味深い(*1)」と評されています。

また、他の雑誌によれば、DIYの展示に関しては「典型的英国人的仕事の余暇の活動として大工とポート・マンを示している(*2)」との解説も書かれており、当時のイギリスの日常の描写の一つとして、家族でDIYを楽しむ様子が描かれていたことが読み取れます。

世界中が宇宙開発や先進技術の展示に沸き立つ中で、イギリス館がスポットを当てた「家族で楽しむDIY」という日常のひとコマ
この展示を見た和気博史は、一体何を感じたのでしょうか。

次回は、モントリオール万博を訪れた和気博史がイギリス館のDIYをする人々の展示を見て何を感じたか、そしてその後の和気産業の歩みにどう繋がっていくのかについて迫ります。どうぞお楽しみに。

こぼれ話

2026年7月17日、和気産業は創業104年を迎えました。

和気産業創業から104年分の年表

この歴史ブログ連載でもおさらいしているように、大正時代末期に家庭金物卸商として創業した和気信行商店が、社名を変え、DIY専門商社へと舵を切りながらも、昭和、平成、そして令和と、時代を超えて1世紀以上もの間、卸売業として皆様のお役に立てていることに感謝いたします。

ちなみに、和気信行商店が創業した1922年はツタンカーメン王のお墓が見つかった年だそうです。
世界的な大発見と同じ年に私たちの歴史も始まっていたと思うと、なんだか不思議な縁や歴史の長さを感じますね。

(*1)『近代建築』vol.21 (1967年7月号) 昭和42年7月25日、近代建築社発行 (株式会社乃村工藝社所蔵)
(*2)『graphis』No.132 1967 Volume23、The Graphis Press社発行 (株式会社乃村工藝社所蔵)

※この記事の内容は、弊社社史「和気産業65年の歩み」、「和気産業80年の歩み」ならびに2026年3月の株式会社乃村工藝社様への取材を元に作成しています。